一般社団法人

    
         
           従来の確定拠出年金と私達の選択制確定拠出年金
          私たちは従来タイプの確定拠出年金も、選択制とよばれる確定拠出年金も、どちらにも
 対応してきましたが、特殊な例を除いて、ほとんどの企業が選択制確定拠出年金を選んで
 おります。
 中小企業にとって非常に使い勝手の良い制度ですが、制度に対する誤解や理解不足、
 そして本質を見失ったPRも多く、制度を検討する際は、制約条件や実施状況についての
 課題をきちんと理解したいところです。
 以下は、やや長文になりますが、選択制確定拠出年金を検討する際に、必ずお役に立つ
 情報と思います。ご参考になれば幸いです。

 まず従来からの一般的な確定拠出年金、そして間にユニクロが採用している確定拠出年金を
 挟んで、選択制確定拠出年金のポイント、選択上の留意点をご説明させていただきます。

(1)制度の概要
   図1.一般的な確定拠出年金

 図中の吹き出しでコメントしている通りの制度ですが、当初は事業主しか掛金を拠出で
 きませんでした。
 現在は加入者も給与からの天引きで掛金を出せるようになりました。労使双方で拠出する
 のでマッチング拠出と呼ばれています。社員の拠出分も含め掛金は非課税、運用中も
 非課税(課税凍結中)、支給時も退職所得控除や公的年金等控除の対象になるので、
 極めて有利に将来に備えられます。

 掛金には限度額があり、労使併せて月5.5万円(年間66万円)が上限になっています
 (他の企業年金がある場合はその半額)。ただし、マッチング拠出の場合は、社員は
 事業主が負担した掛金以下しか掛けられない為折角の優遇措置も制約を受けざるを得ません

   ⑵ 確定拠出年金のメリット・デメリット
図2に長所や制約事項を記していますが、特に指摘しておきたい点を以下に補足します。
 
・人材採用対策
 少子高齢化で厳しい人材採用難の時代に向けて、企業が国のスタンダードな制度を用意
 する意義は小さくないはずです。またライフプラン教育がきちんと行えて、将来に備える
 社員の自立意識・安心感が高まれば社員のモチベーション、定着性向上にもつながります
 2017年8月時点で、正規雇用者の5人強に1人が企業型に加入していますが、今後
 益々加入者が増えていくなかで、中途採用に際して前職から確定拠出年金を持ち込んで
 くるケースが多くなります。
 転職先に企業型確定拠出年金がなければ、掛金はもとより、年間数千円の管理料を自腹で
 負担し、また金融機関から提供される情報等も咀嚼できないまま個人的に制度を続ける
 ことになりますので、転職先に確定拠出年金があるかないかは転職者にとって大きな関心
 ごとになります。
 人材の採用・確保に際し他社との競合上、企業にとって確定拠出年金の検討は無視できな
 い時代になってくると思われます。
 
・“60歳まではおろせない”のは決定的な欠点か?
 この件は本当に良し悪しです。加入者にとって、大きな制約事項とされていますが、確実
 に何十年先の備えを作ろうとしたら誰かに預けて絶対におろさない位の覚悟がないと
 自分年金づくりなどなかなかできません。若い社員は一般に退職金への意識は薄いですが、
 年金への不安や関心は極めて強く、ライフプランの教育がきちんとできれば、経験上、
 加入者は60歳までおろせないことをネックとは思いません。
 
・“投資教育が必要”も欠点か?
 社員が自ら将来に備える確定拠出年金は、株の投資信託のようにリスクの高い運用商品も
 あり社員教育が義務付けられており、事業主にとっては確かに負担になります。
 しかし、年金が年々目減りしていくなかで、社員が将来に安心し、長く働いてもらうため
 には、制度を導入する・しないにかかわらずライフプランを考え自立意識を喚起する教育
 だけは本当に必要な時代になってきたのではないでしょうか。

  図2
            
   中小企業に急速に普及している選択制確定拠出年金
(1)制度のアウトライン
 前述の様な一般的な企業型確定拠出年金とはちょっと異なった非常に特徴あるしくみが特
 に中小企業に急速に普及し出しています。その特徴は、
 ①事業主負担の掛金がごく少額であっても労使併せて掛金限度枠の5.5万円(他に企業
  年金があればその半分)まで社員が自由に掛けられる。
 ②社員が負担した掛金も非課税、かつ社会保険料の対象外。
 ③金融機関が引き受けない20人、10人以下の企業でも引き受けている、等です。
 
(2)どんな仕組み?・・ところでユニクロの確定拠出年金とは?
 この仕組みを話す前に、ユニクロが採用している確定拠出年金の仕組みを説明すると話が
 分かり易くなります。
 図3はユニクロの確定拠出年金です。
 ユニクロは適格年金制度を廃止して確定拠出年金に移行しました。従業員に一律3.6万円
 (当時の確定拠出年金の掛金上限)を掛金原資として用意し、これを10等分して確定拠出
 年金の掛金に回すか、給与(前払退職金)として受け取るかを社員が自由に選べるように
 しています。これが選択制と呼ばれる所以です。
 社員一人一人が、自分のライフプランに応じて柔軟に拠出額を選択できるユニークなしくみ
 と注目されました。しかし、この方法を中小企業が取り入れようとしても、企業がそんなに
 掛金を負担するわけにはいきません。でも、この掛金原資を労使で用意し合うなら、
 同じ仕組みが作れます。
図3.ユニクロはちょっと変わった方法を採用!では、ユニクロ方式とは?
   
            (3)では、選択制確定拠出年金のしくみとは?
 図4はこの制度の概要です。
 現在の掛金上限は5.5万円ですが、私たちは仕組み上5.4万円を上限としています。
 図のように会社が4千円負担してくれるなら、5万円だけ給与から切り離し、給与ではなく
 あくまで会社から拠出する掛金原資とすれば、ユニクロと全く同じ仕組みができあがります

 私たちの場合は、千円単位で0~5万円まで自由に掛金を選択できるようにしています。
 0の人(掛金拠出を選択しない人)は、会社の4千円だけが掛金となり、あとは全部給与に
 なりますから、従来となにも変わりません。
 2万円を掛金として選択した人は、会社の4千円と併せて2.4 万円の掛金拠出となり、
 給与支給額は今まで30万円ならば28万円となり、この28万円から源泉徴収が始まります。

 この制度のメリットは、掛金の原資をすべて会社から出しているので、マッチング拠出の
 ように会社以下というような概念はありません。
 また掛金拠出ぶんは給与ではないので社会保険料の対象にもなりません。確定拠出年金で
 すから当然、税金も刈りません。運用中も受給時も他の退職金制度と同様で税制優遇され
 ますから非常に優遇された自分年金づくりが行えます。

 大手企業でも既に多数導入されていますが、確定拠出年金は導入時に金融機関側の作業
 負担が大きいため一般に少人数の企業は採算上、相手にしてもらえません。
 これを代理店等が介在して少人数でも引き受けできるようにすることで、中小企業に急速に
 浸透しています。
 ところが、こうした取扱いの中で売る方も買う方も“給与から拠出しているのではない”と
 いうことをキチンと理解できていないことから混乱を起こすケースもよくあり、
 厚生労働省もこの点に頭を痛めていると聞いております。
 なお、この制度は、掛金を等級や職位で差をつけたい等、制度設計は他の制度と同様に
 柔軟に決められます。給与天引きするマッチング拠出と異なり年末調整も不要で、
 日常の管理は極めて単純です。

 図4.では、私達の選択制確定拠出年金とは?



   (4)留意点も多々あります。

 ・社会保障や年金の受給に不利にならないためには?

 この制度は社員が拠出を選択した分だけ給与支給額が減ることになるので、それによって
 標準報酬月額の等級が下がると必然的に社会保険料負担が軽減されます。

 その反面、健康保険の傷病給付金、育児介護休業手当、出産手当、労災や雇用保険等の
 社会保障に相応の影響がでてきます。また将来の厚生年金の支給にも影響してきます。
 社会保険料や税金軽減分を将来に活かせばまだ良いのですが、毎月の給与のなかで
 負担軽減分を浪費してしまい、かつ掛金もゼロ金利の元本確保商品で寝かしてしまえば、
 老後の備えにも、社会保障の受給上でも逆効果になりかねません。
 売る側もそのあたりのポイントや、どういう条件なら不利にならないかを理解していない
 ケースが非常に多いため、「選択制確定拠出年金はやるべきでない」という批判的な
 見解も耳にします。しかし、色々なケースをシミュレーションすると、どの年齢帯でも
 0.7~0.8%程度の年利で運用できれば年金への影響は、クリアできるレベルです。
 社会保障への影響も、背伸びせず若干の利回りが確保できる程度でカバーできる範疇です。
 しかし、まともにライフプラン教育・投資教育が出来ないでメリットばかりを主張すると、
 加入者に迷惑をかけることになります。
 この課題に限らず、確定拠出年金導入の成否は“ライフプラン教育・投資教育がすべて”です
   ・「事業主の社会保険料負担が大幅軽減できます」の過剰PRにご注意を!
 前述のように、社員の社会保険料負担が減れば、社会保険料は労使折半なので、必然的に
 事業主の負担も軽減されます。そのため「社会保険料を大幅に減らしませんか」と
 甘言されがちです。しかし、実態はそんなおいしい話にはなりません。

 社員1人が等級をさげても事業主の負担軽減はせいぜい年間に3万円台から6万円程度であり
 大した人数でない企業で大きな効果を期待することに無理があります。

 それ以前の問題として、ライフプランや投資の教育が本当に効果を発揮し、社員が毎月の
 給与支給額を削ってでも将来に備えようとする自覚を喚起できなければ、自分の等級が
 下がるほどの掛金拠出をするわけがありません。
 まして企業には制度を導入することで毎月、管理料(事務費)が発生します。

 現在、企業型確定拠出年金の6割位が預金で放ったらかしになっています。
 大手企業の担当者と話し合ってみると、多くの場合、「半数位の人は預金で寝かした
 まま」という答えが返ってきます。
 2017年8月時点で企業型確定拠出年金の加入企業は2.7万社(加入者数630万人)で、
 企業数の半数強が100人以下の企業と言われています。ここから100人以下の企業の
 実態を推算すると、8割以上の加入者が運用していない、あるいは無関心という計算に
 なってしまいます。
 今の世間全般の導入時研修の実態を考えると、選択制確定拠出年金を導入した100人以下
 の企業で一体どれ程の加入者が、1等級下がる程の掛金選択をしているのか、疑問を
 感じてしまいます。
 社会保険料負担軽減の効果が出ないということで、事業見直しのなかで制度をやめてし
 まった企業の話も耳にします。

 私たちは独自のカリキュラムで、少人数企業を中心に加入者の8割、9割が投資信託を
 選んで堅実に運用している実績を積み重ねてきました。
 それであっても、上記の管理料負担分位は相殺、ないしは軽減できても、本質的に精々こ
 の程度の話に過ぎません。あくまで、人材採用と将来に安心し社員に長く働いてもらう
 ための福利厚生の制度の範疇で考えるべき制度です。
 そのうえで、上手にいかせれば企業にとって非常に役立つ制度だと確信しております。



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